Sunday, April 29, 2007

Impactをもっと使ってみる2


物体の運動方程式(運動量の保存則)の理解を深めるために、以下のような問題について、理論式と解析の比較を行ってみた。以下の問題は、陰解法と陽解法による非線形構造解析の実際に記載してある問題を、そのまま使わせて頂いています。

傾いた棒(長さ l , 質量 m)が、壁面に向かって、ある速度でもって運動していくとき、壁面との接地点(A点)での跳ね返りは無かったと仮定すると、右図のような運動をする。(Fig.1 から Fig.2 の状態に、棒は運動する)

壁面との衝突後に、棒が回転しながら運動する速度 vc' を求めてみる。

棒は衝突直前までは、速度vc でもって、並進方向に運動していく。角運動量 L = r × m ⋅ v より、壁との接地点(A点)での角運動量で整理すると、

LA = r × m ⋅ v = l / 2 × m ⋅ (vc cosα)

ただし、棒の幅寸法については、その寸法値は十分小さいもので、結果に対しても影響が小さいと仮定し、無視(幅寸法 -> ゼロ)してある。

次に、衝突直後について整理する。壁面との摩擦が0であると仮定すると、壁面から及ぼされる衝撃力は、壁面から垂直上方向となる。よって、棒の速度方向は、その方向を変えることなく、新たな速度 vc' でもって運動を継続する。また、壁面との接地点(A点)が、壁面上で左方向に滑る運動が付け加わる為、棒は回転運動をすることになる。ここで、棒の回転運動の角速度を仮に ω' とする。ある慣性モーメント Irod を持つ物体が、角速度 ω' で運動するとき、その角運動量は、L = Irod ⋅ ω' と表現できる。
よって、衝突後での棒の角運動量は、

LA' = ( r × m ⋅ v ) + ( Irod ⋅ ω' ) = ( l / 2 × m ⋅ (vc' cosα) ) + ( Irod ⋅ ω' )

ここで、角運動量の保存則より、

LA = LA'

が成り立つ。

上に述べた式から整理していくと、vc' を求める式が得られる。
ここで、 Irod , ω' についても、既知の数値(棒の長さ,棒の質量,vc' , α) で、表現してやる必要があるが、実際やってみると、これが結構長い手順であったので、このブログ記事では割愛する。結果だけであるが、vc' を求める式は、以下のようになる。

vc' = 3 vc ⋅ ( cos2α / (1 + 3 ⋅ cos2α) )

衝突直前までの棒の速度 vc を 1.0 [m/sec] , 棒の傾き角度 α を 30 度 とすると、vc' は、

vc' = 3.0 × 1.0 × ( cos2(30) / (1 + 3 × cos2(30) ) ) = 0.6923 [m/sec]

上記のような棒のモデルを、Impact FEM 用に作成し、同様な条件で、速度 vc を与え、壁面から跳ね返りがないように衝突させてみた。

Fig.3 壁面に接地後の様子




Impact FEM は陽解法プログラムであるので、解が振動しているが、速度値 vc' は、大体 0.701 [m/sec] の値に収束している。理論式で得られた数値との差異は、1.26 [%] で、かなり近い値が得られた。

Impact FEM では、剛体が定義された節点郡に対して、さらに境界条件としての拘束などを与えることが困難なため、棒は、十分剛と思われる程度の剛性を定義した弾性体とした∗1。そのため、棒自体の変形によって、若干のエネルギ散逸(変形エネルギ散逸)が起こる。また理論式では、棒の幅寸法について無視したとことで、三角関数を用いた成分計算のときの角度値が、真値とは少しずれている。これらの要因から、理論式とは少し数値がずれているものと考える。

∗1 : ここでは、致し方なく十分剛な弾性体を使用したが、十分剛な弾性体を、陽解法で計算するモデル内に含むと、安定時間増分 Δt を無意味に縮小させ、計算コストを増大させるので、あまり好ましくない方法ではある。また、剛に近い弾性体による、妙な高周波ノイズを結果に含むことにもなる。なまじ、陰解法より、実際の現象に忠実な解法であるため、実際には存在し得ない剛体などという定義の扱いに、特に注意しないといけない気がする。

Sunday, April 15, 2007

Impactをもっと使ってみる

前回、Impactで単純な棒波の計算を実施して理論との比較とかいう ややこしいことをしてましたが、いかんせん、形が単純すぎて現実感がない。やはり、おもしろさをもっと向上するためには、現実感があり、目で見て触れて感じれるぐらいのものが良いような感じがしたので、形だけでも車らしくした、下のような計算をしたりしてました。

このモデルは、Blenderで作りました。
たしかに、これぐらいの形状を表現してくると、見栄えはよく現実感みたいなものが得られるんですが、うちの iBook G4 では、計算時間が大変かかるようになってきて、なかなか結果を鑑賞することが出来ない問題がでてきました。陽解法での、衝突計算は、Δt との戦いみたいですね。
ちなみに、この、Impactは、接触問題をペナルティ法によって解いてるようです。このペナルティ法のクセと、あとΔtの取り方を理屈ではなく経験によって理解度を向上させるのに、このImpactの利用は、大変有益でした。

ペナルティ法って、接触体の間に、バネを発生させて、あたかも接触しているような変形をそれぞれの接触面に発生させる方法ですが、あたかも当たっているような状態であって、当たっている状態 とは違う。当然あたかも当たっているような状態なだけで、当たっているとは認識されていないので、間に発生させているバネ力より、接触面間の運動による力の方が勝れば、突き抜けていくモードになるんですね。実際には、どんだけ力が大きくなっても当たっている限りは、破壊でもしない限り貫通なんてことは起きないんですけど。あと、接触間に見えないバネを作るということで、バネは弾性体なので、接触間の見えない要素(バネ)によって、エネルギが散逸されてしまう という実際には無いエネルギ散逸現象が付け加わるデメリットもあるみたいですね。短い計算時間で接触問題を解く良い手法なんですが、なんでもかんでも良いものなってなかなか無いですね。

Sunday, April 01, 2007

物体内の波動伝播

物体内の波動の伝播を表現する式は、要素のタイプによって異なるが、ビーム(棒)要素の場合の伝播速度は、c = √(E / ρ) で表されるらしい。ここで、Eは縦弾性係数、ρは質量密度。これは、物体内を振動波が伝播していく速度を表現したもので、空気をその媒介物として考えた場合、音速を表現したものとも言える。
ところで、物体内の伝播速度が上記であるとした場合、例えば、長さ=L の棒があった場合、その先端から波動が入力されて、反対側まで到達する為の時間は、time = L / c 。 また、反対側から波動が跳ね返って先端に返ってくる時間もまた、time = L / c 。 ということで、棒に波動を与えて変形させた場合、その波動が、また先端まで返ってくるまでの総時間は、timetotal = 2L / c となるはず。
ここで、有限要素法の解法の一つである陽解法では、運動方程式による陽関数によって変形モードが算出される解法で、波動の伝播を扱う問題について、良好な精度を示すということを聞いた。そこで、陽解法で解くフリーソフト Implact Finite Element Program を使って棒に波動を与えた場合に、波動が跳ね返ってくる時間を計算してみることにした。
モデルは、SI単位系で統一し、長さL=100[m]、直径=2.0[m] の棒(Rod_2) 。波動の速度を計算しやすくするために、縦弾性係数E=1000[Pa] , 質量密度&rho=0.1[kg/m3] の材料特性。それに、初速度1.0[m/sec] の衝撃速度(棒の圧縮方向)を与えてみた。物体内の波動伝播速度は、c = 100 [m/sec] となるので、先端にまで跳ね返ってくる時間は、timetotal = 2 * 100 / 100 = 2.0 [sec] となるはず。

Implact Finite Element Programで計算を実施し、棒の先端部の変位量をプロットしたグラフを右に示す。グラフを見ると、圧縮して変形した棒が、時間1.0[sec]で、圧縮しきって次に変形が元に戻りはじめ、時間2.0[sec]には変位0に戻っていることがわかる。減衰は考慮しない材料特性としたので、波動は減衰せず、さらに棒は伸びていく変形になり、また伸びきった後、縮んでいく変形が繰り返されることになった。
近頃、静的な問題(陰解法)から、衝突現象の問題に触れる機会が多くなってきた。実際の衝突の事象を考えると、大きな変形や接触によって入力方向が絶えず変化し複雑なもので、理解しがたいところがある。そのため、得られた結果(試験、計算機)を鵜呑みにし、その推測(仮説)と考察を怠っていた所があった。改善すべき事象と改良すべき部位の理解を深めていくため、まずは1軸方向に入力方向を固定した問題を解いてみたのだが、単純問題であれば推測した期待通りの解が、アニメーションと計算結果値で見れた。このことで、少し波動の考え方が分かった気がする。少し嬉しい気持ちというか、なんというか不思議な気持ちになった。
今更というかなんというか、ここで少しおもしろかったのが、波動が跳ね返ってくるまでの時間に、その速度(波動の大きさ)が関係しないという点だった。もちろん、最大変位量は、増減するのだが、棒の変位が0となるまでの時間に対して、速度を変化させても影響がなかった。まぁ、知っている人は当然知っていることなのであろうが、私にとっては、ちょっとした発見でした。

- 2007/4/16 : グラフの Y軸ラベル の単位が間違っていたので修正しました。