Saturday, May 12, 2007

初心に戻って少し復習

たわみ量の話題が続いていたので、次に作用する力についても計算をやっていきたい、というノリなのだが、その前に少し復習をしてみたいと思う。

どのような作業でもそうだが、実際取り組もうとしている事柄を事前にイメージしてから、作業すると「よく考えてみれば当たり前だった」というような簡単なミスをなくすことに繋がる。また、いきなり、難しい式を並べ立てると、私自身、何をやっているのか段々と分からなくなってくる性格であるので、難しく考えすぎず、まず大体のイメージを理解したいと思う。そこで、定式化を行う前に、まず、シンプルなモデルにおいて、どのような速度、加速度波形になるか、想像してイメージして十分捉えてから、定式化作業に入りたいと思う。

まず、図1 のような問題を考えてみた。
地面に置かれている物体(剛体)が、後ろから、ポンッと押されて、移動した後、地面との摩擦によって停止するモデルだ。地面との摩擦というと、なにか、難しいような気がしてくるのだが、振動の教科書に記載されるような一般化モデルで表現すると、図2 のように表現できると思う。(ただし物体は返ってこないので、バネ定数項はゼロ)


図1.


図2.


これは、実際に、テーブルに消しゴムなどを置いて指で、はじいている感じを想像すれば良いのだと思う。初速度ゼロの物体は、押されて、速度が上昇し暫くした後、最高速度に達する。その後、また速度は低下し、速度ゼロになって停止するといった具合になると、私はイメージする。最高速度が 3.0 [m/sec] で、移動時間が、3.0 [sec] であった場合を例にとって考えると、以下の図3 のような感じになると思う。尚、時間のズレであるとか、停止における速度低下の方が、もっと緩やかであるとか、色々と細かな違いは、実際にはあると思う。


図3.


速度を表現できれば、あとは、それを微分して加速度。また積分して変位量を表現することが出来るので、加速度、変位量波形も、上の図3に記載してみた。

ここで、平均速度(図3 内では、Average Velocity)という値がある。これは、以下の式によって求められる。
平均速度 = 結果として移動した距離 / 移動時間
上の図3には、この平均速度というのも記載してみた。
今回の場合、移動距離が 4.5 [m] 移動時間が 3.0 [sec] としたので
平均速度 = 4.5 / 3.0 = 1.5 [m/sec] となる。
これは、図3を見たら分かる通り、速度が一定であったと仮定した場合の、速度値になる。しかし、実際にはこのような速度変化の様子は不可能ではあると思う。ここで、思い出したいのだが、力は、加速度に比例する。
F = m ⋅ a
加速度は、速度の時間あたりの変化で、速度一定であるなら、当然加速度はゼロとなる。速度一定と取り扱うと、加速度はゼロとなり、力もゼロということになってしまう。

よって、速度は一定値ではなく、時間あたりに変化していく関数(変数,変動する数値)という捉え方で定式化を行わなければ、力を求めることは出来ないということになる。

また、力が最大となるのは、速度が最大となる時間とはズレることに気づいた。まぁ、当たり前のことであったのだが、速度が上昇している途中(加速中)の途中で最大を迎える。


次に、よくある問題として、ボールの落下という現象を考えてみた。図4。


図4.


落下中、ボールは、一定の重力加速度によって等加速度運動を行う。ボールが接地後、地面から跳ね返されるまでは、ボール自身の弾力、または、地面の弾力性によって支配されるバネ・マス系の振動モデルに近い状態となる。ここで、地面との反発係数が1で、減衰は起きなかったと仮定すると、ボールが地面から跳ね返された後の速度は、ボールが接地したときの最高速度と同じで、方向がまったく反対となる。
上のことをふまえて、地面との接地までにかかる時間が 3.0[sec] , 接地中の時間が 3.0[sec](接触時間) と仮定した時の、速度波形を想像すると、図5のようになると思う。(下方向の運動を、マイナス方向としてある)


図5.


また、速度波形を微分して加速度波形、積分して変位波形も記載してみた。

まぁ、これも当たり前のことではあるが、加速度波形から分かる通り、力が最大となるのは、ボールの移動量が最大となった時であることが分かる。

また、ボール自体を弾性体と見なした上で、ボールの下部表面点を、速度の測定点と捉えた場合は、以下の図6 のようになることに注意したい。


図6.


接地している間中、ボールの下部表面点は、速度がゼロとなるので、加速度もまたゼロとなる。これでは、また力を求めることはできない。きちんと、その運動する物体が持つ質量に相当する点(重心点)を速度測定点として捉える必要がある。
尚、ボール自体を剛体とみなし、地面が変形すると捉える場合は、ボールの何処を測定しても、速度は同じであるので、ボールにおける速度測定点を何処に定義しても問題はない。

ボールの重心点については、変形前では、確かにボールの中心座標である。しかし、地面との接地後、ボールが変形している様子を図5では、上下対称形状が保たれると仮定した上で図示しているが、実際の変形している過程において、この仮定条件が完全に当てはまることは考えにくい。また、ボールの変形する、その過程において、その都度、どの位置が重心点であるのか、それを測定することは、困難であるということは容易に予想がつく。

これら、上でイメージしてみた波形を頭に入れた後、力を求める為の定式化にのぞもうと思う。次から、これらの波形のイメージ自身が、合致しているのかどうかも含めて、ある運動を行う物体に作用する力を求める方法について整理していく。

Tuesday, May 01, 2007

Impactをもっと使ってみる3



Fig.1 のように、質量 m の剛体が、v0の一定速度で、運動しているとします。
剛体が、長さ L , 断面積 A の棒に衝突したとき、棒はどの程度たわむ(圧縮)ことになるか、求めてみようと思います。

ただし、棒自身の質量による、慣性力(静止していようとする慣性力)は無視するとします。また、剛体が、棒に衝突した瞬間から、剛体は棒と一体となって運動する(跳ね返りは無かった)ものとします。

剛体の運動エネルギーを、棒の弾性歪みエネルギーで、完全に吸収したとした(剛体の運動が静止し、棒のたわみ量が最大となった)と考えます。

剛体が速度 v0 で運動している場合、剛体が持っている運動エネルギーは、
1 / 2 ⋅ ( m ⋅ v02 )

バネ定数 k のバネが、x だけ縮むとき、その弾性歪みエネルギーは、
1 / 2 ⋅ ( k ⋅ x2 )

ここで、棒の軸方向に荷重 F を加えた時の、たわみ量 x を求める式は、
x = ( F ⋅ L ) / ( A ⋅ E )

上式を、F= となるように整理すると、
F = ( ( A ⋅ E ) / L ) ⋅ x
となる。
上式と、フックの法則式 F = k ⋅ x を比較すると、ちょうどバネ定数 k に相当する部分がわかる。よって、長さ L , 断面積 A , 縦弾性係数 E の棒を考えた場合、そのバネ定数 k は、
k = ( ( A ⋅ E ) / L )
となる。

よって、バネの弾性歪みエネルギーの式より、棒の弾性歪みエネルギーは、
1 / 2 ⋅ ( k ⋅ x2 ) = 1 / 2 ⋅ ( ( ( A ⋅ E ) / L ) ⋅ x2 )

今、剛体の運動エネルギーを、棒の弾性歪みエネルギーで、完全に吸収したときを考えているので、
1 / 2 ⋅ ( m ⋅ v02 ) = 1 / 2 ⋅ ( ( ( A ⋅ E ) / L ) ⋅ x2 )
となる。

よって、棒の軸方向たわみ量 x は、
x = √( m ⋅ v02 ⋅ L / ( A ⋅ E ) )
となるはず。


次に、たわみが最大となる時間について考えてみる。
Fig.3 のように、バネ⋅マス系と捉えると、これは周期的な振動をする1自由度系の振動モデルと捉えることができる。このような単純な1自由度系の振動モデルの、固有円振動数 ωn [rad/sec] は、

ωn = √( k / m )

ここで、バネ定数 k は、Fig.1 のような棒の場合、k = ( ( A ⋅ E ) / L ) と表現することができるので、固有円振動数 ωn [rad/sec] は、以下のように書き直せる。

ωn = √( ( ( A ⋅ E ) / L ) ⋅ 1 / m )


右図のような振動周期(sin波)を考えた場合、たわみ量(圧縮)が最大となる時間は、1/4 周期の時であることが分かる。
よって、たわみ量(圧縮)が最大となる時間 t [sec] は、π / 2 [rad] を、その固有円振動数 ωn [rad/sec] で割ったもの、

t = ( π / 2 ) ⋅ ( 1 / ωn ) [sec]

となるはず。

今、棒の縦弾性係数 E = 1000 [Pa] , 全長 L = 100 [m] , 直径 D = 2.0 [m] の棒と、剛体の質量 m = 10 [kg] , 初速度 v0 = 1.0 [m/sec] の剛体を考えると、
棒のたわみ量は、
x = √( 10.0 × 1.02 × 100.0 / ( ( 1.02 × π ) × 1000.0 ) ) = 0.5642 [m]

棒のたわみ量(圧縮)が最大となる時間は、
ωn = √( ( ( ( 1.02 × π ) × 1000.0 ) / 100.0 ) × 1 / 10.0 ) = 1.77245 [rad/sec]
t = ( π / 2 ) × ( 1 / 1.77245 ) = 0.8862 [sec]

以前までのブログ記事と同様に、上のような Impact FEM 用モデルを作成し、同様な条件で、速度 v0 で運動している剛体(質点)を、棒に衝突させてみた。


Fig.4 剛体(質点)の速度



Fig.5 棒 先端部の たわみ量


まず、棒のたわみ量が最大となる(剛体の速度がゼロとなる)時間は、0.8831 [sec] (理論式との差異 0.35 [%]) となった。また、その際の、棒のたわみ量は、0.5626 [m] (理論式との差異 0.28 [%]) であった。

ここで、注意点がある。理論式では棒自身の質量は無視しているが、陽解法では、振動の伝播を扱うので、質量密度がゼロの物体は、計算ができない(振動しない)。ここでは、結果に対して十分寄与が小さくなるだけの小さな質量密度を棒に与えた。そのため、若干ではあるが、棒自身の質量によって、静止しようとする慣性力(抵抗力)が発生し、それにより、理論式よりも たわみ量は小さくなるはずである。Impact FEM による計算結果は、その予測通りであった。

上までは、エネルギーの保存則によって、たわみ量を求めてきたが、物体の運動を表現するに、エネルギーという値の他に運動量というものがある。運動量には、それに関わる法則として「運動量の変化は、力積に等しい。」というものがある。さらに詳しく言うと、力が一定値でなく時間と共に変化している関数である場合は、F-t グラフを作成した場合の、その面積(積分,総和)と、運動量の変化は等しい。
今回の計算においても「運動量の変化は、力積に等しい。」が成立しているのかどうか見てみようと思う。

上の問題では、質量 m = 10 [kg] , 初速度 v0 = 1.0 であったので、棒のたわみ量が最大となる時間での、運動量の変化量は、

m ⋅ v0 - m ⋅ v = 10.0 × 1.0 - 10.0 × 0.0 = 10.0

次に、今回の計算において、棒に作用している力 F と、時間 t のグラフは、以下のようになっていた。


Fig.6 棒に作用している荷重


上記のグラフデータを、時間0 ~ 0.8831 で区間積分(台形則による数値積分)を行ったところ、その力積(面積)は、10.001 であった。

理論式と、陽解法プログラムによる結果と、どちらも理論上での数値同士の比較ではあるが、たしかに、運動量の変化は、力積に等しいことを見ることができた。