物体内の波動伝播

物体内の波動の伝播を表現する式は、要素のタイプによって異なるが、ビーム(棒)要素の場合の伝播速度は、c = √(E / ρ) で表されるらしい。ここで、Eは縦弾性係数、ρは質量密度。これは、物体内を振動波が伝播していく速度を表現したもので、空気をその媒介物として考えた場合、音速を表現したものとも言える。
ところで、物体内の伝播速度が上記であるとした場合、例えば、長さ=L の棒があった場合、その先端から波動が入力されて、反対側まで到達する為の時間は、time = L / c 。 また、反対側から波動が跳ね返って先端に返ってくる時間もまた、time = L / c 。 ということで、棒に波動を与えて変形させた場合、その波動が、また先端まで返ってくるまでの総時間は、timetotal = 2L / c となるはず。
ここで、有限要素法の解法の一つである陽解法では、運動方程式による陽関数によって変形モードが算出される解法で、波動の伝播を扱う問題について、良好な精度を示すということを聞いた。そこで、陽解法で解くフリーソフト Implact Finite Element Program を使って棒に波動を与えた場合に、波動が跳ね返ってくる時間を計算してみることにした。
モデルは、SI単位系で統一し、長さL=100[m]、直径=2.0[m] の棒(Rod_2) 。波動の速度を計算しやすくするために、縦弾性係数E=1000[Pa] , 質量密度&rho=0.1[kg/m3] の材料特性。それに、初速度1.0[m/sec] の衝撃速度(棒の圧縮方向)を与えてみた。物体内の波動伝播速度は、c = 100 [m/sec] となるので、先端にまで跳ね返ってくる時間は、timetotal = 2 * 100 / 100 = 2.0 [sec] となるはず。

Implact Finite Element Programで計算を実施し、棒の先端部の変位量をプロットしたグラフを右に示す。グラフを見ると、圧縮して変形した棒が、時間1.0[sec]で、圧縮しきって次に変形が元に戻りはじめ、時間2.0[sec]には変位0に戻っていることがわかる。減衰は考慮しない材料特性としたので、波動は減衰せず、さらに棒は伸びていく変形になり、また伸びきった後、縮んでいく変形が繰り返されることになった。
近頃、静的な問題(陰解法)から、衝突現象の問題に触れる機会が多くなってきた。実際の衝突の事象を考えると、大きな変形や接触によって入力方向が絶えず変化し複雑なもので、理解しがたいところがある。そのため、得られた結果(試験、計算機)を鵜呑みにし、その推測(仮説)と考察を怠っていた所があった。改善すべき事象と改良すべき部位の理解を深めていくため、まずは1軸方向に入力方向を固定した問題を解いてみたのだが、単純問題であれば推測した期待通りの解が、アニメーションと計算結果値で見れた。このことで、少し波動の考え方が分かった気がする。少し嬉しい気持ちというか、なんというか不思議な気持ちになった。
今更というかなんというか、ここで少しおもしろかったのが、波動が跳ね返ってくるまでの時間に、その速度(波動の大きさ)が関係しないという点だった。もちろん、最大変位量は、増減するのだが、棒の変位が0となるまでの時間に対して、速度を変化させても影響がなかった。まぁ、知っている人は当然知っていることなのであろうが、私にとっては、ちょっとした発見でした。

- 2007/4/16 : グラフの Y軸ラベル の単位が間違っていたので修正しました。

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